本稿では、Kevlar®(ケブラー)シートのレーザー切断について説明します。
Kevlar®は、優れた強度重量比を持つことで知られる合成パラ系アラミド繊維です。Kevlar®繊維のレーザー切断は、9.3または10.6µm波長のCO2レーザーを使用して行います。レーザー・ビームでビーム光路にある材料をすばやく熱して気化させ、材料に触れることなくきれいで正確な切断面を形成します。従来の切断エッジを持つ機械工具でKevlar®を切断すると、切断刃が鈍くなってしまう可能性があるため、レーザー切断には明らかなメリットがあります。本加工に用いたレーザーシステム構成、プロセス設定、および結果について以下に示します。
加工素材
- McMaster-Carr:耐切断性ケブラーアラミドファブリックシート、幅60インチ、024インチ厚、製品番号1206T1
レーザーシステム構成
ケブラーシートの加工には、75W 10.6µm CO2レーザーと4xレンズを備えたユニバーサルレーザシステムズのULTRAを使用しました。また高品質なレーザー加工を実現するため、光学部品保護付きエア/ガス・アシスト、ダウンドラフト切断テーブルおよび真空テーブル・ポンプを使用しました。
- 光学部品保護付きエア/ガス・アシスト:
エアおよびガスを使用したレーザー加工には、「コーン」および「バックスイープ」の構成が利用できます。コーン構成では、レーザー・ビームの経路方向に沿って圧縮エア/ガスが流れます。コーンはレーザー光学部品の保護、材料の冷却、煙や炎の発生を防ぎます。バックスイープ構成では、材料の作業表面に沿って圧縮エアが流れます。バックスイープは、特定材料の切断や彫刻の際に生成される重い微粒子を取り除きます。 - ダウンドラフト切断テーブル:
ダウンドラフト切断テーブルは、空洞構造のハニカムコア表面でターゲット素材を支持し、加工処理している素材の両側から煙や裁断くずなどの副生成物を排出することで、きれいなカットエッジを生成すると共に、素材裏面の傷を減らします。またエア/ガス・アシストおよびコーンは、圧縮エア/ガスの噴射によって、副生成物を切断部からダウンドラフト切断テーブルに組み込まれた排気経路に送ります。 - 真空テーブル・ポンプ:
多機能テーブル上の材料を真空による吸引力で押さえるための専用ポンプ。
プロセス設定
材料の過剰な炭化や燃焼を起こすことなく、高品質な加工を達成するプロセス設定を表1に示します。ケブラーシートは、真空テーブル・ポンプを用い、ダウンドラフト切断テーブルに直接設置しました。レーザー加工機能を実証するために、ケブラーシートの生地から2インチ x 2インチの正方形を切り取りました。
表1. プロセス設定
Sample | Process | Power (%) | Speed (%) | PPI1 | VP2 | Time |
Kevlar | Vector | 100 | 17 | 2000 | 0 | 15 sec |
- PPI(Pulses Per Inch):レーザーマーキング用のレーザーパルス数(1インチあたり)
- VP(Vector Performance):ベクターパフォーマンス/品質やスループットを最適化
結果
大量のチャーを生成することなく、ケブラーアラミドシートをレーザー切断することに成功しました。完成したサンプルを分析し、レーザー切断によって材料表面に損傷がないことを確認しました。完成したサンプルの画像を図1に示します。
加工動画
ユニバーサルレーザシステムズのULTRAを使用した、Kevlar®(ケブラー)シートのレーザー切断
英語(00:40)