ポリカーボネート樹脂について
ポリカーボネート(PC)は、電気絶縁性に優れた透明の熱可塑性プラスチックです。射出成形、ロッドやチューブなどの押出成形に加えて、厚さ0.020〜0.750インチのシートが入手可能です。PC樹脂はアクリル(PMMA)よりも高強度かつ卓越した耐熱性を発揮します。また軽量性、強度ならびに熱的および電気的性質に優れることから、電気製品や通信機器の製造に使用されているほか、軽量で粉々になりにくい窓(樹脂ガラス)としても利用されています。ポリカーボネートをアルミニウムで被覆することで照明器具の反射体を形成することもできます。このほかの用途としては、DVDやBlu-rayディスクの基材が挙げられます。
PC素材のレーザー加工
レーザー切断
厚さ1/8インチまでのポリカーボネートシートはCO2レーザーで簡単に切断できますが、一般的なレーザー切断プロセスではエッジが粗くなり変色も引き起こします(図1 a参照)。エッジの色は黄色から濃い茶色まで、レーザー切断のパラメータによって変わります。表面粗さはレーザー切断中のポリカーボネートの溶融によるもので、高いピークパワーで切削することで端部加熱が制限され、図1 bに示すように表面を滑らかに加工できます。これによりエッジは滑らかになりますが、変色の問題は解消しません。この変色はポリカーボネート分子中の芳香環の酸化に起因するもので、ポリカーボネートに固有の問題と考えられており、今のところ解決策は見つかっていません。
a) b)
図1 a)粗い表面と変色を示す一般的なレーザー切断によるエッジ、b)高ピークパワーのレーザー切断プロセスはエッジを滑らかに加工できるが変色する
レーザーマーキング
ポリカーボネートは、CO2レーザーまたはファイバーレーザーを使用してマーキングすることもできます。CO2レーザーは暗褐色のマークを生成し、ファイバーレーザーは黒のマークを生成します。図2に示すポリカーボネートの吸収スペクトルでは、CO2レーザーの波長(9.3または10.6μm)は、ファイバーレーザーの波長(1.06μm)よりも強く吸収されることが分かります。1.06μm波長のビームはポリカーボネート中により深く浸透し、より暗色のマークを形成します。
図2 ポリカーボネートの光吸収スペクトル