エンプラ/スーパーエンプラのレーザー加工

FTOコーティングガラスのレーザーアブレーション

本稿では、FTOコーティングガラスのレーザーアブレーションについて説明します。

このガラスは、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)がコーティングされたガラスです。アブレーションは材料を取り除く物理的なプロセスで、材料を上から下まで完全に除去する、もしくは材料の上部から指定された深さまでを部分的に除去する加工方法です。本加工に用いたレーザーシステム構成、プロセス設定、および結果について以下に示します。

 

加工素材

  1. Techinstro:フッ素ドープ酸化スズ(FTO)コーティングガラス・スライド(ガラスの厚さ:1mm); 50mm x 50mm; 製品番号TISX004

 

レーザーシステム構成

FTOコーティングガラスの加工には、50W 1.06µmファイバーレーザーと4xレンズを備えたユニバーサルレーザシステムズのULTRAを使用しました。また高品質なレーザー加工を実現するため、光学部品保護付きエア/ガス・アシストおよびピン・テーブルを使用しました。

  • 光学部品保護付きエア/ガス・アシスト:
    エアおよびガスを使用したレーザー加工には、「コーン」および「バックスイープ」の構成が利用できます。コーン構成では、レーザー・ビームの経路方向に沿って圧縮エア/ガスが流れます。コーンはレーザー光学部品の保護、材料の冷却、煙や炎の発生を防ぎます。バックスイープ構成では、材料の作業表面に沿って圧縮エアが流れます。バックスイープは、特定材料の切断や彫刻の際に生成される重い微粒子を取り除きます。
  • ピン・テーブル:
    ピン・テーブルは、テーブル表面に配列したピンの上に加工対象物を乗せることで、加工処理中に材料下面の損傷を防ぎます。テーブル表面は反射防止処理が施されているため、材料に反射するレーザー・エネルギーの量が大幅に低減します。ピンは再配置可能で、加工材料を任意の位置に設置できます。ピン・テーブルは、厚めの素材や小さい部品の加工時にダウンドラフト切断テーブルの代替として利用できます。

FTOコーティングガラスは、反射したレーザー・エネルギーが周囲のFTOを傷つけないよう、FTO側を上に向けてピン・テーブルに設置しました。

 

プロセス設定

ガラス基板を損傷することなく、導電性FTO層の高品質なレーザー彫刻を達成するプロセス設定を表1に示します。デザイングラフィックは、導電性FTO層のレーザーアブレーション加工領域を示しています(図1)。

表1.プロセス設定

Sample Process Power (%) Speed (%) Freq1 (kHz) Wave2 ID3 Time
FTO Coated Glass Selective Ablation 40 50 50 0 7 14 min, 42 sec
  1. Freq:ファイバーレーザーパルスの周波数設定
  2. Wave:波形の選択
  3. ID(Image Density):レーザー彫刻の画像密度

 

黒で示されている要素は除去/白い領域は影響を受けません図1. 黒で示されている要素は除去/白い領域は影響を受けません

 

結果

FTOコーティングガラスをレーザーアブレーション加工した結果、ガラス基板を損傷することなく導電性FTOコーティング層を除去することに成功しました。

レーザー彫刻されたパス全体の抵抗率をFluke 115 True RMSマルチメーターを用いて測定したところ、各領域の抵抗率が0Ωを示し、導電層の完全な除去が確認されました。処理後のクリーニングは必要ありませんでした。また加工サンプルを倍率20倍の顕微鏡で分析し、下層のガラスに欠けや割れは見られず損傷がないことを確認しました。

完成したサンプルの顕微鏡分析によって、すべての形状と寸法において設計した通りの品質を得られたことが確認されました。完成したサンプルの画像を図2に示します。

完成したFTOコーティングガラスのサンプル図2. 完成したFTOコーティングガラスのサンプル